阿佐ヶ谷のビブグルマン常連店、餃子坊 豚八戒の店主に聞く

『ミシュラン東京ガイド』の「ビブグルマン」に7年連続で選出されている阿佐ヶ谷の餃子の名店「餃子坊 豚八戒(ちょはっかい)」。ここでしか食べられない本場中国のハルピン餃子のほか、予約困難な大人気コースメニュー「火鍋コース」など魅力が目白押しです。今回は、そんな豚八戒のご主人・香山謙吾(こうやまけんご)さんに、餃子作りのこだわりやお店の素敵なエピソードなど、楽しいお話をたくさん伺ってきました!

※ビブグルマン:『ミシュランガイド』の格付けのひとつ。良心的な値段で価格以上に満足できる美味しい料理が食べられるおススメのお店として評価されるもの。

「餃子坊 豚八戒」を始めるまで

阿佐ヶ谷 餃子坊豚八戒の外観

―今日はお忙しいところありがとうございます。早速ですが、お店を開く前はどのようなことをされていたのですか?

香山:自分は神戸の出身で、高校を辞めてからフラフラしていたんです。最初は神戸でお店を営んでいましたけどね。

―フラフラ、ですか。

香山:そのあと、石垣島でお店をやりながら陶芸家に弟子入りしたり、湘南でサーフィンをやったり、ハワイで仕事をしていたこともありました。ハワイで当時有名だった日本のディスコ、「マハラジャ」がオープンするときには、お友達だった桑名正博さんにハワイの道路で偶然会ってね、そこに連れて行ってもらったこともありました。

阿佐ヶ谷 餃子坊豚八戒のオーナー香山さん

―すごい! 若かりし日々は貴重なご経験をたくさんお持ちですね。では、奥様、陳さんとの馴れ初めは?

香山:僕がマネージャーをしていたお店に、奥さんが留学生のアルバイトとして入ってきたのが、出会いと言えば出会いです。お店でトラブルが起きてしまい、彼女がバイトを辞めなくちゃならなくってね、色々話を聞いたり、相談を受けたり。なんか、色々ね。

―その「色々」が聞きたいんですが。

香山:え~?!もう、そんなの忘れちゃったよ~(笑)。

―根掘り葉掘りすみません(笑)。このお店、餃子屋さんを開くことになったきっかけを教えてください。

香山:うちの奥さんが中国のハルピン出身だったんです。ハルピンは餃子が家庭料理で、よく食べているところです。それで、奥さんが餃子作れるから「二人でお店をやろうか」という話になって、2007年の7月7日にお店を開きました。

―七夕の日に開店。素敵ですね。奥様の陳さんがお店の餃子を手作りして出していらっしゃるということですね。

香山:そうですね。仕込みから、すべて手作りでやってくれています。ハルピンの餃子は種類も豊富で、奥さんは中国に帰ると、現地の味を食べ歩いて、研究を重ねていますね。

「ビブグルマン」の評価を得た味

阿佐ヶ谷 餃子坊豚八戒 華餃子

華餃子640円

―一番人気のメニューを教えてください。

香山:一番多く出てるのは、やっぱり焼き餃子(華餃子)かな。でも、麻辣水餃子が好きという人もいるし、海老餃子も人気があるし、ちまきもファンが多いし。どのメニューも「好き」と言ってくれるお客さんが多いですね。

―華餃子は八角のスパイスが効いていてめちゃくちゃ美味しいですよね!

香山:(笑)。はい、焼き餃子のスパイスは9種類使っています。日本ではなかなか見つけられないスパイスもあるからね。

―例えばどんなスパイスですか?

香山:肉寇(ロウコウ)というスパイスとか、なかなか日本では見つからないです。だから、毎年奥さんの実家に行ってスパイスを大量に仕入れて来ます。大変なんですよ、家の中がもう、スパイスの混ざった強烈な匂いが充満してますから(笑)。

人気の焼き餃子「華餃子」の断面

―一そんなご苦労もあって、『ミシュラン東京ガイド』の「ビブグルマン」に7年連続選出されるほどの有名店でいらっしゃいます。

香山:え? そうなの?

―ご存じないのですか? そうですよ! 某グルメサイトでも2020年から2年連続で「百名店」に選ばれています。常にファンを絶やさない理由はどこにあると思いますか?

香山:普通にやってるだけだけどね(笑)。

―「普通」のハードルが高すぎです(笑)。

香山:いやいや(笑)。でもね、基本的なところこそ、手を抜かないでやっています。いつも同じ味のものを出せるように、丁寧に準備をして、調理をしているというところは、開店当初からずっと変わらないです。

―いつ食べても「美味しい!」ということですね。

香山:インターネットで良い噂も悪い噂もすぐに広まるから。そこは本当に気を付けて、どんな時でも変わらない味を出せるようにしていますね。

―だからますます多くのファンが集まるのですね。それから、ネットでも予約困難と噂される「火鍋コース」のメニューは、どんな風に決めているのですか?

香山:「火鍋」は、最初はメニューになかったんです。

阿佐ヶ谷 餃子坊 人気の火鍋

―そうなんですか?

香山:常連さんに「火鍋が食べたい」と言われて、「いいよ~」って出してあげたら、人気が出ちゃって。コースメニューも、足りないと追加が面倒になっちゃうから、最初から全部入れておいてあげようと、盛り込んじゃった。そうしたらボリューム満点なコースになりました(笑)。

―大人気の「火鍋コース」はお客さんのリクエストから出たメニューだったんですね。

コロナ禍の苦悩

―お店をやっていて大変だったことは?

香山:色々あったけど、やっぱりコロナは大変でした。ここ2年間は中国に行けなくて、スパイスを取り寄せるのも本当に大変でした。

阿佐ヶ谷 餃子坊 オーナー香山さん 楽しい方

―やはりコロナ禍ではご苦労されましたか。

香山:お店の方も営業時間や来店人数が制限されちゃうから、開店以来一番きつかったかもしれないです。でもね、それでも来てくれるお客さんがいたからね。うちはまだ、被害が大きくない方だと思いますよ。

―飲食店は本当に大変でしたね。

香山:阿佐ヶ谷のお店の店主とも仲良くしてるんだけどね、本当にこの辺のお店はみんな苦労していました。どこもみんな、そうだったと思います。

―この界隈の皆さんで苦労をともにされていたのですね。コロナ禍でテイクアウトも増えましたか。

香山:やっぱり増えましたね。こちらで調理することもできるのですが、自宅で調理する方には、餃子の焼き方や、水餃子の場合は茹で方を書いた紙をつけてお渡ししています。

―テイクアウトで華餃子をやりたいのですが、何かコツはありますか?

香山:焼くときに、パックの中の粉も使ってください。適当に水で少し溶いてかけてみてください。

―わー! ありがとうございます。お店のようにはいかないかもしれないけれど、チャレンジしてみます!

知らない場所や人の新しい発見が面白い

―お店はチャイニーズ・インテリアで統一されていて、おしゃれですね。

香山:いいでしょ。奥さんが中国出身だし、お店も本場の中国仕込みの餃子を出しているしね。ここにあるものは、ほとんど中国で買ってきたんですよ。

餃子坊豚八戒 2階のエキゾチックな部屋

―2階席の関羽像はインパクトがありますね。

香山:三国志に出てくる「関羽(かんう)」は、中国では商売の神様として祀られているんです。横浜中華街にも関羽の神社がありますよね。この関羽像も、奥さんの実家に帰った時に買い求めて来ました。

餃子坊豚八戒 2階の関羽像

―「豚八戒」の「チョ」の部分が「豚」という漢字なのは、お客さんから質問されませんか?(『西遊記』での本来の表記は「猪八戒」)

香山:よく言われますよ(笑)。自分が単純に間違っちゃっただけなんだけどね。奥さんも、中国ではブタの漢字は「猪」って書くから、“日本では豚って書くのか・・・”とそのまま納得しちゃって(笑)。

阿佐ヶ谷豚八戒の別宅

―そうなんですね(笑)。でも、豚が良い具合にマスコットキャラクターになっていますね。可愛い豚の置物も、店内でたくさん見られます。

香山:大きいものはほとんど中国から買ってきたんです。小さいものは、お客さんが海外のお土産に買ってきてくれるものが多いですよ。シンガポールとか、フィリピンとか、国によって色々な表情のものがありますよ。オスとメスのつがいのものも、面白いでしょ。

阿佐ヶ谷豚八戒の店内にたくさん置いてある豚の置物など。隠れミッキーの様に探して楽しめる

―ほんとだ! 店内随所に豚ちゃんが! ディズニーランドの「ミッキー探し」みたいで面白いですね。

香山:陶器でできているアマビエは、陶芸で弟子入りしていた時の後輩がくれたものです。色々いただくことが多いんですよね。有難いことに。

―旅先や、遠い場所からも思い出してもらえると(笑)。それも香山さんのお人柄ですね。休日はどんな風にお過ごしですか?

香山:その辺をフラフラしてますよ。

―あ、フラフラ(笑)。フラフラしながらどんなことをされているんですか?

香山:スーパー銭湯とか、サウナが好きで、よく行ってますよ。和光とか、川崎にも。

―ドライブがご趣味なんですね。

香山:違うよ、自転車。ママチャリで行くよ(笑)。埼玉も、千葉も。知らない場所に行くことが好きです。新しい発見があって面白いですよ。

―ママチャリで(笑)! それはすごいです。

香山:昔は車にもよく乗ってたんだけど、東京は渋滞も多いですからね。自転車の方がかえって早い時もありますよ。裏道を行くと以外と近い。自転車に乗って川を越えると、やっぱり気持ちいいしね。

阿佐ヶ谷豚八戒の店内

―お気に入りの場所はありますか?

香山:多摩川に架かっている府中の是政橋を自転車で渡るのがいいですね。景色が良くて気持ちいいです。区内だと、善福寺公園にはよく行きます。家族とも、一人でも。桜も綺麗だし、広くて良い場所ですね。

―ご家族で行かれることがあるんですね。ご家族は奥様の他にいらっしゃるんですか?

香山:いるよ。娘二人。阿佐ヶ谷姉妹(笑)。

―まさに阿佐ヶ谷姉妹(笑)!! 楽しそうなご家族ですね。

餃子坊豚八戒の香山オーナー夫妻

気取らない街、阿佐ヶ谷が好き

―香山さんから見て阿佐ヶ谷は、一言でいうとどんな街ですか?

香山:気取らない街だね。パジャマのままでフラっとコンビニに行けちゃう。そのへんにいる人たちがみんな気取らないで、肩の力を抜いて過ごせるところが好きですね。

―とても良い街ですよね。お店をやっていて、良かったなと思うことはなんでしょうか。

香山:やっぱりね。老若男女、いろんなお客さんが来てくれることが本当に嬉しいです。ここのカウンターで、常連さんも、新しく来てくれたお客さんとも、色々な話ができることが、とても楽しいです。

―将来こういうことをしてみたい、と考えていることはありますか

香山:ゆっくりしたいなぁ。自分の時間が欲しいかな、と思います。そして、いろんな場所に行きたい。基本的にフラフラするのが好きなんですよ。もちろん、今も十分楽しいけどね(笑)。

餃子坊豚八戒火鍋部屋はオリエンタルな雰囲気
餃子坊豚八戒の本日のおすすめメニュー

餃子坊 豚八戒
住所 杉並区阿佐ヶ谷南3-37-5
電話 03-3398-5527
営業時間 18:00~23:00(L.O.22:30)
テイクアウト営業 火〜土曜 16:00~20:30
定休日 日曜・月曜

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※本記事に掲載している情報は2022年03月13日公開時点のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。