倉嶋紀和子のはしご酒のススメin阿佐ヶ谷

呑んで呑んで、呑まれて呑んでのはしご酒。第二回目は、阿佐ヶ谷の町をぶらりふらり酩酊徘徊。阿佐ヶ谷といえば、「阿佐谷七夕まつり」や「阿佐谷ジャズストリート」など、地元に根ざした、家族で楽しめるイベントが目白押しな町。だけれども、ここも中央線沿線。やっぱり酔い酒場の宝庫。西荻窪とも高円寺ともまたひと味違った、女ひとり酒にとても優しい町でもあるのだ。

果物満載! 女子力もあがる親父酒場「川名」

町のランドマーク欅並木の一本裏通りを寺沿いにてくてくてくてく。歩く、歩く。駅から徒歩10分ほどのところにある酒場「川名」。連日、呑兵衛が集う阿佐ヶ谷の人気店。「よじかわ」(午後4時に川名)なる言葉があるほど、酒呑みに愛されている焼き鳥屋だ。こんちわ~。(午後4時だから、まだ「こんにちは」の時間帯なのだ)。大将、今日も二枚目ですねえ。いぶし銀のイケメン大将に逢いたくて来る酒場でもある。まずは、生グレープフルーツサワーください! グレープフルーツの半切りを自分でギュギュッと手絞りだ。そしてお通しも、フルーツ。この日は、オレンジ。ね、おもしろいでしょ? 「酒呑みは、フルーツなんて食べないからね。うちでくらい食べてもらおうと思って」。呑兵衛から最も縁遠い食材・果物。それがお通しで供される。これは、いつまでも健康に呑んで欲しいという大将のお気遣い。酒を鯨飲しても美肌は保ちたい、そんな女子力の高い呑兵衛女にもピッタリな酒場である。

「川名」は、魚も仕入れがとってもいい。ホワイトボードに書かれたその日のオススメを眺めながら、かつおのたたき。ダイニングレストランと見まごうばかりに真っ白なお皿に美しく盛り付けされてやってくる。この余白づかい、焼き鳥屋とは思えぬシャレオツさ(失礼!)。しかも、薬味のおろし生姜、数の子の粕漬けとともに添えられているのが、なんと、バナナ! ここにも果物が。かつおのたたきと数の子で酒をがっつり楽しんで、お口直しにバナナなのだ。この日隣り合った常連おとーさんのまぐろ刺しのお皿には、メロンが添えられていたんだから! 大将のこのブレなさ、かっこええ~。

常連さんとの話も弾み、山形の銘酒「楯野川」を立て続けに2杯、ぐい~。ここは、客筋が実にいい。だから、女ひとり酒でも安心して呑めるのだ。看板酒肴の焼き鳥も頂いたところで、お次、行きますか!

訪れると入口横の焼き場で大将が待っていてくれました。ここで焼き鳥のテイクアウトも可能です。

訪れると入口横の焼き場で大将が待っていてくれました。ここで焼き鳥のテイクアウトも可能です。

まずは生グレープフルーツサワー(411円)で乾杯!

まずは生グレープフルーツサワー(411円)で乾杯!

肴はかつおのたたき(519円)と焼き鳥(自家製つくね119円、豚にんにく108円)を注文。これに合わせるのはやっぱり日本酒(楯野川、476円)。

肴はかつおのたたき(519円)と焼き鳥(自家製つくね119円、豚にんにく108円)を注文。これに合わせるのはやっぱり日本酒(楯野川、476円)。

だんだんピッチもあがってきましたねー。まだ1軒めですが…。

だんだんピッチもあがってきましたねー。まだ1軒めですが…。

酒がすすんで舌も滑らかに。常連さんとの会話も弾みます。

酒がすすんで舌も滑らかに。常連さんとの会話も弾みます。

川名
住所 杉並区阿佐谷北3-11-20
電話 03-3339-3079
営業時間 16:00~23:00
定休日 月曜・火曜

メゼも肉も、エキメキも。女心を鷲掴みにする素敵プレート「イズミル」

魚&焼き鳥で小腹を満たした後は、トルコ料理屋さんへ。東京一、いや、日本一美味と評判の「イズミル」。なかなか予約がとれない人気店だけれど、ひとりだったら、サクッと入れちゃったりする場合もある。ひとり酒だからこそ、預かれる恩恵。

あたしは、呑むほどに酸っぱいものが欲しくなる酸味体質。だからこそ、2軒めでトルコ料理。ヨーグルトの酸味がきいた前菜がことのほか好物なのである。そしてここは、オーナーのエリフさんこだわりの手料理が、とにかくどれもこれもびっくりするほど美味しい。野菜たっぷりのメゼ(前菜)も、美しい脂が滴るジューシーな肉料理も、名物のエキメキ(パン)も。そう、はっきりいって、メニューの端から端まで食べつくしたい。だけれど、胃袋はひとつ。そんな卑しきひとり酒派にぜひ食して欲しいのが、「シェフにおまかせプレート」。この日オススメのメゼ盛り合わせと肉料理、ライスと、フルコースで楽しめる一皿。ちょこちょことあれやこれやをつまみ喰いしたくなるのが、女のサガと申します。そんな女心を満足させてくれるワンプレートでもあるのだ。

口当たりなめらかなフムス(ひよこ豆のペースト)を焼きたてエキメキに塗ってパクリ。くぅ~、ウンマイのぉ。お次は、優しい酸味がたまらないほうれん草とヨーグルトの和え物。そうそう、これよ、これ。あたしが猛烈に食べたかった酸味酒肴。トルコの地酒ラクをくいっ~と。水で割ると透明な液体がサッと白濁するお酒。アニス(薬草)の独特の香りが、胃袋をすっきりとさせてくれて、いくらでも入ってしまう罪作りなお酒。メゼによく合うんだなあ、これが。

この日の肉料理は、手羽先。むんずと手づかみで、かぶりつき。おいしく食べるには、豪快に! サラサラとした肉脂が滴り落ち、悶絶の旨さ。ラク、もう一杯!

清潔で奥の大きな鏡が印象的な店内。駆けつけにラクの水割り(648円)を。

清潔で奥の大きな鏡が印象的な店内。駆けつけにラクの水割り(648円)を。

トルコ国旗のマークが入ったコックコート姿が凛々しいエリフさん。

トルコ国旗のマークが入ったコックコート姿が凛々しいエリフさん。

トルコ料理の味がギュッと詰まった一皿、シェフにおまかせプレート(日替わり:2484円)とエキメキ(270円)。

トルコ料理の味がギュッと詰まった一皿、シェフにおまかせプレート(日替わり:2484円)とエキメキ(270円)。

ラクの水割りをさらにぐいぐいといっちゃいます。

ラクの水割りをさらにぐいぐいといっちゃいます。

イズミル
住所 杉並区阿佐谷北2-13-2パサージュ阿佐谷2F
電話 03-3310-4666
営業時間 18:00~23:00(L.O)
定休日 月曜

貴婦人なカクテルにうっとり。ハートに火をつけて♥「アルフォンソ」

肉も野菜もパンにライスも。〆の飯までがっつりとやった後に向かうは、バー「アルフォンソ」。「川名」から「イズミル」、そして「アルフォンソ」。実はこのルート、徐々に駅に近づいてきているのだ。どんなに酔っ払っても、ちゃんと改札に辿り着けるゴールデンコースでもあったりして。

カウンター席とテーブル席2席ほどの小体なバー。六本木や西麻布などでもバーを経営されているマスターが、バーテンダーさんとして立たれているお店。この日は、季節のカクテルをご用意してくださっているという。秋の果物・巨峰を使った「セプドール」。嬉しいですねえ。でもね、でもね。あたし、隙あらば呑む、のがモットーの人間。わずかな時間でも酒空白ができちまうと、落ち着きがなくなってしまうのだ。だから、まずはさくっとバーボンソーダ割り、ください~。マスターのお気遣いを瞬時に無にしてしまうドアホ、あい、すみません。マスターに「バランスがいい」バーボンを選んでいただき、メーカーズマークのソーダ割り。それをコクコクと呑みながら、マスターがカクテルを作っていらっしゃる様を堪能。バーテンダーさんの美しき手技、いつ観ても惚れ惚れしちゃうわ。そしてもちろんお味も。

旬の巨峰とブランデーのカクテル、セプドール。あぁ、なんて貴婦人な味。あたしのこと、こんな麗しき女だと思っていてくださっているのかしらん。へべれけ酔眼でうっとりとマスターを眺めてしまう妄想女(=あたし)。そしてさらにこっくり可愛いカクテル、アレキサンダーも。あぁ、もう、今宵は好きにしてぇ~~!! なところで、無情にも、サクッとリリースされてしまう。うん、これが現実だよね。。。

JRの線路沿いにひっそりと佇むバー。入口の雰囲気のせいか、スナックと間違われることもあるのだそう。

JRの線路沿いにひっそりと佇むバー。入口の雰囲気のせいか、スナックと間違われることもあるのだそう。

いつの間にか頼んでいたバーボンソーダ割りからスタート。

いつの間にか頼んでいたバーボンソーダ割りからスタート。

フランス語で「黄金の葡萄の木」を意味するカクテル・セプドール(980円)。

フランス語で「黄金の葡萄の木」を意味するカクテル・セプドール(980円)。

酔いも深まってきて、マスター村川さんのシェイク姿にうっとり。

酔いも深まってきて、マスター村川さんのシェイク姿にうっとり。

次に用意してくれたのがアレキサンダー(880円)。カカオリキュール、生クリームを使うブランデーベースのカクテルです。

次に用意してくれたのがアレキサンダー(880円)。カカオリキュール、生クリームを使うブランデーベースのカクテルです。

アルフォンソ
住所 杉並区阿佐谷北2-2-1
電話 03-3330-5602
営業時間 19:00~2:00
定休日 水曜

無駄な乙女全開モードをあっさりいなされたところで、今宵はお開き。となるはずだった。が、ここで終わるはずもなく。。。無意識に足が向くは、阿佐ヶ谷の呑兵衛ストリート「スターロード」。酔い酒場がずらり立ち並ぶ酔いロードを千鳥足。酔えば酔うほど、割烹着女将に会いたくなる。そんな癖(へき)も持ち合わせているあたくしめ。磁力に吸い寄せられるように「燗酒屋」の暖簾をくぐってしまった。まさに小股の切れ上がったいい女の女将さんがつけてくれる燗酒が、たまらなく好き。今宵もまだまだ終わらないのだ!

はしご酒はつづくよどこまでも。取材後もひとり暖簾をくぐる倉嶋さんでした。

はしご酒はつづくよどこまでも。取材後もひとり暖簾をくぐる倉嶋さんでした。

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※本記事に掲載している情報は2015年11月13日公開時点のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。