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西荻窪のラーメン店・パパパパパインの店主に聞く

2011年のオープン以来、奇抜な組み合わせにダジャレ感満載なネーミングのメニューのオンパレードで、業界だけでなく広くグルメファンに話題を振りまいてきた西荻窪のラーメン店「パイナップルラーメン屋さん パパパパパイン」。今では休日に観光客の行列ができるほどで、まさに杉並有数の観光スポットと言っても過言ではありません(!?)。今回、そんな人気店を営む倉田裕彰さんを訪ね、なぜパイナップルなのか、なぜ変なものばかりつくるのか、過去・現在・未来の時間軸であれこれ語っていただきました。(取材協力:ラーメンライター・福岡岳洋氏)

パイナップルに出会うまで

—今日はよろしくお願いします。まずはご出身から教えていただけますか。

倉田:出身は東京です。最寄り駅でいうと東京メトロの中野坂上ですね。

—子供のころに食べた、東京の思い出深いラーメンなどはありますか?

倉田:ラーメン好きになったのは高校生の時ですね。小金井市にある中央大学付属高校に通っていたんですが、学校の前が新小金井街道で、プチ・ラーメン街道みたいなところでした。そこでラーメンに目覚めました。今はもうないんですが、「たちばな家」という豚骨ラーメンの安い店がありまして、そこにかなりはまって。中央線を使っていたので、通学途中で荻窪のラーメン屋にも寄ったりしていました。

—例えばどの辺りですか?

倉田:やっぱり「春木屋」さんは美味しいな~と思いました。テレビに出ていたから行ってみた、というような軽いノリでしたけど。

—そのころの荻窪でもやはり「春木屋」は輝いていましたか?

倉田:やはり今も昔も荻窪では「春木屋」さんが一番でしょうか。当時みんなで「ラーメン行こうぜ」と誘い合ってチェーン店に行ったりするんだけど、ボクは一人で「春木屋」さんなんかに行ってました。色んなラーメンを食べてみたかったというのはありましたね。

—西荻窪や阿佐ヶ谷で食べ歩くことはあったんですか?

倉田:西荻窪はそんなに来たことなかったですね。阿佐ヶ谷は「萬福本舗」さんくらいかなあ。

—今、おいくつですか?

倉田:31歳です。

—そうすると高校生のころっていうと15年くらい前ですね。

倉田:当時はラーメン評論家の石神秀幸さんの本が全盛期で、本に載っているところはとりあえず全部行ってみようという感じでした。阿佐ヶ谷の「萬福本舗」さんもそうですね。今よりもテレビなどでラーメン情報が多かった時代ですね。

—高校卒業後はそのまま中央大学に進まれたんですか?

倉田:はい。ただ、大学に入ったものの、やりたいことが見つからなくて2年くらいで辞めちゃいました。在学中にふと「ラーメン好きだからラーメン屋になろう」と思いついた感じです。高校の時の「たちばな家」の影響はかなりありますね。

—決意してすぐ辞めちゃったんですか?

倉田:はい。でもいきなり辞めるって言ったら、周りから反対されまして。それで、とりあえずアルバイトでもという感じで、最初は南池袋の「大勝軒」に入ったんです。

—最初のアルバイト先。

倉田:何も分ってなくて普通にアルバイト情報誌で探しました。修行させてくださいとか、そういうのがなんか恥ずかしくて(笑)。

—気持ちとしてはラーメン屋をやりたいなと思っていたわけですね。

倉田:その時は舐めてたと思うんですけど、「有名な大勝軒だ~」と思って入ったんですよ。よくテレビに出ていましたし。そうしたら勝手が違うなって。「有名な山岸さんがやってるところではなかったんだ~」って感じでした(編集部注:山岸さんがいたのは東池袋の「大勝軒」)。ただ、その店で厨房側に入ってみて、「なんか楽しいな」と思って決意は固まりましたね。

—なるほど。アルバイトの期間はどれくらいだったんですか?

倉田:1年半くらいです。そのころから本格的に食べ歩きするようになりました。それで、後の修行先になる西早稲田の「渡なべ」という店に結構通うようになって。そこで週一ペースで面白い限定ラーメンというのをやっていて、ここで食べていれば食べ歩きしなくていいなと。遠くに行くのは大変ですし(笑)。

—その限定ラーメンとはどういうものだったんですか?

倉田:「普通の一品」と「変わった一品」というパターンが多かったです。それで、食べ歩きも面倒くさくなってきたのでそこで2種類食べるようになりました。スタッフの人も色々教えてくれるので、こっちの方が勉強になるなって。

—なるほど。

倉田:それでふとした時に「大勝軒でアルバイトしてます」という話になって、「じゃあ、うちで働きなよ」と引き抜いていただいた感じで就職しました。

—そこにはどのくらいいらっしゃったんですか?

倉田:通算5年で、系列店の立ち上げなんかもやりました。町田にあった「基motoi」という店のオープンや、神保町の「可似」という店にもいました。

—限定ラーメンのお話がありましたが、厨房側に入っていたときの思い出深い出来事などはありますか?

倉田:毎週土日に、1000円で2杯食べられるといった限定ラーメンを、スタッフの技術向上も兼ねて一週間に2品作るんですよ。ただし社長に認められて「やっていいよ」と言われたスタッフしかやれないんですけど。

—それは創造力を試されますね。

倉田:そうですね。だから考えるのが苦手な人はできないんですけど、ボクは運よく早い段階でやらせてもらえたのもあって、そこで技術とか発想を養えたかなと思いますね。

—その内容は具体的にどういうものなんですか?

倉田:1品は豚骨ラーメンなど正統派の作り方のラーメンを覚えつつ、もう1品、変わったのをつくる感じですかね。または例えばカツオがテーマで、濃いのと薄いのを一種類ずつというパターンだったり。あと実は、当時からフルーツをちょっと使ったりとか。

—おお。まさにルーツがそこに。

倉田:フルーツというジャンルにはその時から目をつけてた部分がありますね。

パパパパパインを立ち上げる

—そこで5年ほどいわゆる修行時代を過ごして、独立するきっかけみたいなのは?

倉田:もともと独立するつもりでそこに入ったので、ずっとチャンスはうかがっていたのですが、あとは許可を待つだけというか。

—それは、独立するのに例えば3年だったら3年と設定するとか、何か仕組みはあるんですか?

倉田:「渡なべ」の場合、別に何年というのはなくて、半年から1年でそれなりの技術は完全に身につく会社なので。そこで別に辞めてもいいんです。だけどタイミング的に辞められなかったというか。

—義理もありますしね。

倉田:「辞めさせてください」って言いながら、2~3年経った感じですね。

—独立までのプロセスはどんな感じですか。「渡なべ」で働いている間に物件探したりしましたか?

倉田:ボクの場合は「辞めるときは1年前くらいに言ってね」という感じだったので、その最後の年の休憩中にオープンのイメージを膨らませていました。具体的な物件探しは辞めてからですが、ひと月くらいでたまたま見つかりました。

—「このエリア」という具体的なイメージはあったんですか?

倉田:まず、こういう変わった店をやるので、確実にメディアを意識しました。メディアに取り上げられるとなると、なるべくテレビ局が来やすいようにと。例えば住まいは町田なんですが、町田だとなかなか引っかからないんですよ。なるべく都心に近いところでやらなくちゃ勝負にならない。

—そこは戦略的に考えて23区内にしたと。他にはどんな条件で探しましたか?

倉田:初めは一人でやりたかったので、「なるべく狭い店舗で駅から近いところ」を手当たり次第ネットで探してました。

—ここは居抜きですよね。

倉田:ええ、元は焼き小籠包のお店でした。中国の方がやっていたお店が一年もたなかった場所みたいです。

—スープを炊くコンロはどこにあるんですか?

倉田:ウチの店、スープを炊いてないんですよ。煮干しと昆布の水出しで。もともとそれでやろうってプランがあったので。火にかけないやり方ですね。炊くんじゃなくって自然に出す。そういうスペースが要らないので、狭い分ちょっと家賃なんかも抑えてるって感じですね。

—そこらへんも全部計算して?

倉田:このくらいの広さでいいなという計算はありましたね、ずっと。

—じゃあ、ほぼイメージ通りですか?

倉田:ある程度は良かったと思います。ただ結果的に言えば、平日の西荻はあんまり人がいないかな(笑)。

—パイナップルで行こうと決めたのは、「渡なべ」時代の限定でフルーツを使い始めたころですか?

倉田:そうですね。ただ「絶対これで行こう!」と思ってから、途中、他店でレモンラーメンが話題になった時はちょっと焦りました。「パイナップルも先にやられたらどうしよう」って(笑)。

—パイナップルという一つの果物に行きついた理由は何でしょうか?

倉田:今とは別の使い方で、ちょっと化学的な話なんですけどね。

—ぜひ、その化学的な話を。

倉田:タンパク質分解酵素ってわかりますか?キウイとかのパッションフルーツ系に多い成分なんですけど。一般的な話かどうか分かりませんが、例えば豚骨ラーメンは、冷やすとゼラチン質が固まります。ゼリーでいうところの固める成分の「ゼラチン」なんですけど。パイナップルのゼリーは、タンパク質分解酵素の働きで、固まらないから純粋なものは多分できないんですよね。そこらへんをちょっと利用して、「渡なべ」時代に限定ラーメンで「冷やし豚骨ラーメン」っていうのをつくれるようにしたんです。冷やすとプルンプルンに固まっちゃうところを、パイナップルを入れると固まらないようにできるんです。そういうのを作ったことも、きっかけかなと。

—なるほど。

倉田:ただ当時はそんな話をしても、「ああ、そう」みたいな感じだったんですけどね(笑)。でもそれ以上に目立ちたかったんですよ。今はどこも美味しいラーメン屋さんばかりなので、そこで目立つには、よっぽど変わったことやらなくちゃな…っていう。

—でも、賭けですよね。一か八かみたいな。

試行錯誤、始まる

倉田:ボクは最初から大フィーバーすると思ってたんですよ(笑)。みんな1回は食べに来るだろうと。でも最初の半年はホントに誰も来ない日があって。メディアにも引っかからないし、やばかったです。他の物件を探してました(笑)。

—最初の半年の間に?

倉田:当時はかなり、評価が分かれてしまってました。むしろ批判される勢いで…。最初、給料もアルバイト以下しかなかった。

—初期投資の返済もありますよね…。

倉田:本当にやばかったです。よく「オープン景気」って言いますけど、全くなかったですからね。初日だけちょっと来たかなって感じでしたが、次の日から一日30人も来てなかったです。単純計算で一時間2~3人ですよ。やってられない(笑)。

—そこから盛り返すきっかけは?

倉田:やっぱり、きっかけは半年後にテレビに出られたことです。最初は「やっちまった伝説」というTBS系の特番でした。ラーメン評論家の大崎裕史さんが紹介してくれたんですけど、 “全国のやっちまった人たちを特集する”という番組で。

—それはゴールデンタイムに流れるような番組だったんですか?

倉田:はい、夜10時くらいの番組で。それで一気にお客さんが来てくれたんですけど、またやっぱり落ちていって。それでまたそのあとにテレビ出て、またちょっと落ちて、という繰り返しです。

—2011年オープンで、テレビに出始めたのは2012年からですかね。

倉田:そうですね、多いときは、2週間に1回のペースで取材がありました。そのうち、だんだん落ち幅が少なくなってきて、まあ、何とかやっていけるようになったかなと。

—なかなかそういうお店ってないですよね(笑)。定期的というか断続的なテレビ出演で客の入りをキープするって(笑)。

倉田:だから、ずっと出られるわけではないので、常に目立つことをやらなくちゃっていうのはありました。話題になるように、チョコの限定ラーメンとか変わったことをやったり。

—パイナップル以外で、最初の限定は何だったんですか?

倉田:テレビに出る前で、キウイですね。なにか目立たないとやばいと思って。といいつつ実は最初の限定で、近くの老舗ラーメン店の「はつね」さんに行列ができているから、そこで人気のタンメンをやってみました。「タタタタタンメン」って名前で(笑)。でも、全然来ない。

—なんですか、それ(笑)。

倉田:普通のタンメン…。多分一人ぐらいしか食べてないですが、やっぱりこういう普通のものじゃダメなんだと思いましたね。それでその後キウイを使って「キキキキキウイ」というのをやったら、並んでるんですよ(笑)。あ、こういうことかと。やっぱり変わったことやらなくちゃって。

—そういうのがなかったら、ひょっとしてテレビの話もなかったかも知れないですね。

倉田:もう、潰れてたかなって。限定ラーメンやったら、やっぱりばーって来てくれたので、そういうので食いつないでました。ちなみにさっきのタンメンじゃないですけど、竹輪をのっけて「シナそば」っていうのもやりました。「支那そば」じゃなくって、シナモンを入れた「シナそば」なんですが(笑)。でも本当に、普通のって売れなかったですね。

—ダジャレですね(笑)。ところで「笑っていいとも」にも出られたとか?

倉田:単純に運だと思いますけども…。

—トータルで何本くらいテレビ取材されたか覚えてますか?

倉田:20〜30回くらいですかね。想像以上に取り上げてもらったなっていう感じはありますよね。

—やっぱり「珍しさ」なんでしょうかね。

倉田:ラーメン番組や、美味しいランキングみたいなのには出たことないですね。とりあえず「変わってる」みたいな切り口で…。

—でも美味しさも備わってますけれどね。

倉田:だから最初の一年はお客さんの反応を見て味は常に改良しましたよね。徐々にパイン感を薄くしていくとか(笑)。今は味変えてないですけど。

—そこはぜひ聞きたいポイントなのですが、その面白さとかユニークさを追求することと、美味しさを維持することって対立する部分があるじゃないですか。そのへんの兼ね合いはどうなってるんですか?

倉田:だいたい「面白さ8、美味しさ2」くらいのつもりでやっていますね(笑)。

—なるほど…(笑)。そしてパイン感をどんどん減らしているというのは…?

倉田:スープの4分の1がパイン果汁なんですが、それは当初から変えてません。でも、ちょっとダシを濃くしてラーメンっぽくするようになりました。2年くらい前からは、更にラーメンっぽくなるようにニンニクを追加できるようにしました。

—ラーメンっぽく、ねえ(笑)。

倉田:だから今は、美味しいと思って来てくれる人が増えましたね。5年やってて変わってきたなと。最初はネタ的に「変なラーメンがあるから行ってみよう」って誘われて来たお客さんが多いんですけど、今は「美味しいから行ってみなよ」っていう声が多くなってきて。最初は戸惑いましたけどね。

—ネットの評判などを見てても、美味しいって書かれてますよね。

倉田:「意外と美味しいですね」って言われてたんですよ。あんまり言わないじゃないですか、飲食店相手に。

—お客さんが言うんだ、そういうことを(笑)。

倉田:はい、だからもうお客さんが入ってきて、「美味しいから連れてきましたよ」みたいなテンションの人がいるんですが、こっちはちょっと恥ずかしくなる(笑)。ボクは美味しいと思って出してるわけじゃないんで。

—リピーターと初めての人の割合はどれくらいですか?

倉田:ボク自身はあまりリピーターを把握してないんです。目が悪くて、お客さんの顔がちゃんと見えない(笑)。ただ、初めての方には「お水はセルフサービスです」と伝えるようにしているんですけれど、座らないでサーっと取りに行く方がいるので、「あ、来たことあるんだ」と(笑)。そういう方は多くなってきてますね。

—休日の昼時などはたいてい行列ができていますよね。

倉田:大きな旅行バッグ持った方が来てくれたりしますね。大阪の方に受けがいいという実感はあります。

ダジャレまみれの限定ラーメン

限定ラーメンの一部。左上から時計回りに「スススススイカ」「メメメメメロン」「キキキキキウイ」「パパパパパーシモン」「マママママロン」「シナそば」「カカカカカカオ」「パパパパパフェ」

限定ラーメンの一部。左上から時計回りに「スススススイカ」「メメメメメロン」「キキキキキウイ」「パパパパパーシモン」「マママママロン」「シナそば」「カカカカカカオ」「パパパパパフェ」

—限定ラーメンについて改めて聞かせてください。スイカ、メロン、カカオなどを使ったものが色々ありますが、どういう考え、発想でつくっているのでしょう?

倉田:そんな料理するほうじゃないし、得意なわけでもないので、身近なものからヒントを得ることが多いですね。何つくろうかな、というときに自販機見たりして(笑)。

—ああ、そういう感じなんですね(笑)。パイナップルの場合には化学的な根拠があったので、そういう何かがあるのかなと。

倉田:それは修行時代だけで、この店のパイナップルラーメンにはその根拠は使っていません。変わったことをやるためにパイナップルを使おうと浅はかに考えただけです(笑)。店名も浅はかに、「パパパパパフィー」(※1)からとりました(笑)。

(※1)テレビ朝日系列で1997年10月から2002年3月まで放送されていたバラエティ番組。

—(笑)。だいたい全部思いつきですか?

倉田:そうですね。夏だし、メロンにするかとか。フルーツという縛りが一応あるから。あとはそこからちょっとお菓子に飛んでみたり、っていう感じですね。

—これまででスマッシュヒットだなと思っているものはありますか?

倉田:個人的にチョコは美味しいと思って出していて、カカオのタンタンメンとか油そばとかは結構好きですね。

—そこでの面白さと味は、何対何くらいなんですか?

倉田:パイナップルと同じで面白さ先行です。とりあえず「変わったものをやらなくちゃ」っていうのがあって、それを食べられる範囲でまとめるっていう。

—うーん、その基準自体がおかしいですよね(笑)。今後に向けてのアイデアのストックはまだありますか?

倉田:アイデアは「やらなくちゃ」っていうときに考えるので、今は別にそんなに困ってないっちゃ困ってないんで、ないですね。やらなくちゃいけないからつくっている感じです(笑)。それで今は、限定を求めて来るお客さんがだんだん多くなってきたこともあって、長期間出せる簡単なものをつくってます。

—じゃあ、「次は何だろう」って楽しみにしてるお客さんもいるんじゃないですか?

倉田:いると思いますけど、最近はサイクルを持たせたいなと。この季節はコレみたいな感じで。ある程度定着したら季節毎の定番にしていこうかなって。

—それから限定ということでビックリしたのは、この間の『シン・ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』とコラボしたものです。それぞれ「ゴゴゴゴゴジラ」と「ショショショショ初号機」という名前ですね。これは他の限定とは全く毛色が違うじゃないですか。

倉田:そうですね。フルーツというしばりじゃなくて、キャラクターという食べ物じゃないものなので。

—この経緯を教えてもらえませんか。

倉田:もともと『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督がウチの店にかなり来てくれていて、「何かできないかな」という打診が先方の会社からありまして。それで、『シン・ゴジラ』の公開に当たってゴジラのラーメンをつくって欲しいという依頼があったので、お受けしました。併せて先方が「ゴジラ対エヴァンゲリオン」というプロモーションをしていたので、エヴァンゲリオンは好きだったので、「ぜひ両方やらせてください」みたいな感じで。

—いつぐらいの話ですか?

倉田:スタートが2016年7月の後半だったので、たしか2ヶ月前くらいに、そういうお話があったと思います。

—スピード早いですね。

倉田:限定やるときはいつもぶっつけ本番なんです。だけど、あれに関してはエヴァンゲリオンの初号機の色をかなり研究したので、今までの限定の中ではかなり苦労しました。味じゃなくて、どうやったら近い色を出せるかなって。

—なるほど、やっぱりそこはエヴァ好きとしては譲れないと。

倉田:そう、そこは譲れなかったんで、パチンコ屋に行って色を確認して…(笑)。身近にあるのってそれしかなかったんで、でもやっぱり微妙にアニメと色が違うんですよね。一応、樋口監督に食べていただいてOKが出たので販売しましたが。

—じゃあ、何回か試作品みたいなものをつくって?

倉田:そうですね。写真を見せながら「こんな色出せました」「ちょっと違うね」みたいな感じでやりとりがありました(笑)。

—ゴジラの方はどうなんですか。ヤングコーンを尻尾に使う発想は上手いなって思いましたけど。

倉田:尻尾は最初なかったんですけど、樋口監督から「尻尾とか目玉とか乗せられない?」みたいな指摘があって。「じゃあ、尻尾で。目はどうにもならないですよ」って、ヤングコーンを尻尾に見立ててゴマにくぐらせてみたらどうだろうと。それでOKが出ました。いつもの限定と違って変わった食材もなかったので、味も評判良かったです。

—いずれにしてもファンとしては感無量というか、やれてよかったなと。

倉田:はい。一応ゴジラありきだったんですけど、ボクはどっちかっていうとエヴァをやりたかったので頑張りました。限定を2種類やるのは大変なんですけどね。

オープン5年で見えてきたこと

—いかがですか。5年やってきてみて、実感などは。

倉田:最初とは違う感じになってきました。いい評判の方が多くなってきちゃってる(笑)。

—今後はやっぱりもっと面白さを前面に押し出して?

倉田:そこは生活が第一なんで(笑)、売れる分にはそれが一番いいです。飽きられない程度には話題にならなくちゃいけないですけど。メディア取材も以前より少なくなってきましたし。

—ちょっと落ち着いてきたんですね。

倉田:まあ、なんか変わったこともやらなくちゃ、とは思ってますけど、もう少し追い込まれてからじゃないと多分やらない(笑)。

—やってない具材もまだたくさんありますよね(笑)。

倉田:限定が多くなってきたら「売上やばいんだな」と思っていただければ…(笑)。

—それにしても、目指してやって来るお客さんに向けて、期待を裏切らず面白いものを提供し続けていくってのは大事ですよね。

倉田:人によってそれぞれですけどね。「思ったより普通だね」っていうお客さんもいるし。最近は来てくれれば何でもいいかなって思うんですよ。昔は、「普通に美味しい」とか言われると、ちょっとショックだったんですけど(笑)。今は、たくさん来てくれれば、その中に気に入ってくれるお客さんもいるだろうし。

—まかないを自分でつくって食べるとか、そういうことはないですか?

倉田:そうですね~、パパパパパインは好きだけど、パイナップルラーメンは好きじゃないんですよ(笑)。わかります?お店は好きなんですけど。

—いいふうに解釈すると、客観視ができてるってことですね(笑)。

倉田:「すげー美味いです」とか言われても別に嬉しくない(笑)。ボク、町田でもう1店舗やっているんですけど、そっちのラーメンはかなり力入れてます。ほぼ毎日食べてますよ。だから食べログなんかでそっちとこっちが同じ評価っていうのは、なんか許せないですね(笑)。

—(笑)。そう言いつつも、パパパパパインにわざわざ遠くからも食べに来てくれるっていうのは嬉しいじゃないですか。

倉田:そうですね。存在価値はかなりあるのかなって自分でも思います。

—ワンアンドオンリーです。世界でここだけですから。

倉田:そんなたいそうなものじゃないですよ(笑)。

—いや、すごいですよ。思いついてもやらないですよ。

倉田:そこは自分でもバカなのかなと思いますよね、1店舗目でこんなことやってしまって。

—思いつくまでは、誰でもできるんですよ。でも、そこからアクセル踏んでやる人はいない。

倉田:そこがいいとこなのかなとは思いますけどね。だから最初に言いましたけど、最初オープンする前は「誰かにアイデア取られたらどうしよう」と心配してましたけど、その心配は不要でした(笑)。ただ、パインつけ麺の店とか一応出て来ましたからね。

—でも倉田さんのほうが先だった。

倉田:そうですね。だからまあ、振り切って良かったなと。最初オープン前は、券売機にパイン無しラーメンとかも入れておいたんですよ。パイナップルラーメンの試作の段階で、「これ美味しくないなあ」と(笑)。だけど、振り切った方が心意気を評価してくれるんじゃないかと思った。一本にしてやってきて本当に良かったと思っています。

パイナップルラーメン屋さん パパパパパイン
住所 杉並区西荻南3-12-1
電話 03-3247-2181
営業時間 11:00~23:00 日祝11:00~20:00
定休日 なし